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栂海新道(白馬岳から日本海縦走登山) 2日目
2003/7/27
3時起床。緻密な計画では、徐々に明けていく荘厳なるモルゲンロートを眺めながら、優雅に外で朝食をとる予定であった。そのために美味しいパンとスープを準備していた。だが寒いのでやめた。自然には逆らってはいけないのである。 小屋の中で朝食を済ませ外に出る。空と陸の境界線が赤く染まっている。まだ夜のとばりを残している空には、弓のように細くしなった26夜の月が浮かんで見える。あと15分早ければ、境界線の赤い光が、もっと神秘的に見えたのだが、まー仕方がない。寒いのだから。 私の一番好きな「日の出1時間前」を30分過ぎたAM4:10、避難小屋を後にする。雪倉岳の頂上あたりで日の出を迎えられそうだ。ヘッドランプの明かりはもういらない。景色が刻々と変化していく。雪倉岳頂上には日の出5分後に着いた。 壮観である。妙高・火打の横から昇った太陽は、日本海側の雲海に光を差し込み佐渡島を浮かび上がらせ、白馬岳・剣岳に光を当てる。雪渓を白く輝かせ、高山植物の花々に色を与える。誰もいない我々だけのピークからの眺めである。贅沢な朝の時間である。 のんびりといつまでもこの至福の時を味わっていたいところだが、今日の行程も長い。後ろ髪を引かれながら雪倉岳を後にする。 昨日同様、このあたりも高山植物がとても多い。標高が下がると植生も変わり、次々と新しい花が現れ、名前も分からぬ無知な我々の目を楽しませてくれる。 雪倉岳から一気に下り、しばらく平坦な道を歩いた後、朝日岳への登りにさしかかる。 昨日ご馳走になった笹を今晩もう一度と思い、道端の太めの笹を先端から30cmのところでポキっと収穫する。食い意地のはった3人はポキポキポキポキと収穫していく。収穫した笹はYさんのザックの脇に挿していく。あっという間にパンダが喜びそうな笹ザックになってしまった。 一本休憩をいれていると、アカゲラが目の前の木に飛んできた。特にこちらを気にする様子もなく餌となる虫を探しているようだ。あの「コンコンコンコン」というむち打ちになりそうなパフォーマンスはあまり見せてはくれなかったが、このあたりの人擦れしていない自然の豊かさを感じさせてくれた。 登り1時間30分、大汗をかきながら8:50、朝日岳着。ガスが湧いてきて遠望は利かないが、360度見渡せる気持ちの良い山頂である。4人パーティーが先着していたが、栂池へ向かうとのこと。日本海へ向かうパーティーにはいまだ遭遇していないが、この先誰かと会うのだろうか?事前の情報では、最近栂海新道を歩く人が増えてきているとのことだったが。 9:45、栂池との分岐着。「栂海新道」、読んで字のごとく栂池と日本海を結ぶ道である。我々の栂海新道はここからがスタートとなる。(白馬からここまで歩いてきたのは何だったの?おまけ?いえいえ『海抜3,000mから0mへ』の為なのです。) 栂池との分岐には、この栂海新道を作ったサワガニ山岳会の道標が立っていた。アルミ版に文字の部分をくりぬいた道標である。手間はかかっているが、あまり良い出来ではない。が、どことなく愛着が湧く。この先日本海までポイントごとに道標があったのだが、その道標を見つける度に「おっ、サワガニの道標があったよ」と和むのであった。この後も、地塘あり、お花畑あり、雪渓ありと何かと変化に富んだ快適ルートが続く。ヒオウギアヤメという初めて見る花もあったし、何よりも水芭蕉が可憐な姿を保っているのに感動した。最近見る水芭蕉は、どこもかしこも栄養過多の様子でお化け芭蕉と化してしまっているようだが、この辺りの水芭蕉は15cm位の本来の可憐な大きさを保っているものが多かった。まだまだ人の立ち入りが少ない証拠である。「さすが栂海新道、やるじゃないか!」と見なおしてしまったのであった。 12:45、黒岩山着。まずまずのペースだろうか。でも白馬以来、常にコースタイムより時間がかかっている。そんなに遅くはないつもりなのだが、、、原因は簡単だった。道草が多かったのだ。花に見とれ、景色に見とれている時間が多かったようだ。黒岩山から犬ヶ岳までは早かった。笹尾根の為、花も少なく、ガスもかかっていて眺望も利かない。淡々と歩いたおかげで3時間コースを2時間ちょっとで歩いてしまった。 犬ヶ岳手前でおいしい水をたっぷり汲み15:45、栂海山荘着。小屋には先客が2名いて、我々と同じく、明日日本海へ下るらしい。小屋の2階を陣取り、荷物をぶちまけ、手足を伸ばす。ふぅ~、お疲れ様でした。さすがに今日は長かった。持参した梅酒で乾杯! 早速昨日の味覚をもう一度とばかり、今日収穫した笹を焼き始める。が、どうも上手くいかない。昨日もらった笹は確かに食べるところがいっぱいあったのに、こうして自分達で焼いてみると1cm位しか食べられないのである。後はスジばかりが残って、パンダじゃあるまいしとても食べられたものではない。焼き方が悪いのか、笹の種類が違うのか、結局分からないまま食べかすばかりが山の様に残ってしまったのだった。笹の道は奥が深い! 今日、栂海新道に入って、親不知から登ってきたという単独行4人とすれ違った。最初に会ったのは「めざせ、穂高!」と気合い満々の丹沢ボッカ隊。が、穂高に着く頃には一歩引いてしまう強烈体臭男と化しているかもしれない。その他「黒岩山はどこ?どこ?」とMDウォークマンを聴きながら余裕で歩いていた外国人や、汗をたっぷり吸った白いTシャツに、ぷっくらした白くて丸いお腹をくっきりと透けて見せる体脂肪男などの方々であった。この栂海新道を登ろうという方々は、皆ちょっと変わっているのかもしれない。 さて栂海山荘のことで記しておかなければいけないことがある。ここのトイレは空中トイレで有名らしい。小屋からちょっと離れた急勾配の斜面に、網状の鉄製足場の様なものを張り出して作られている。すなわち用を足すトイレ先端部分は空中に浮いている状態であり、こんなところで落ちて遭難するととっても恥ずかしく、「10分たって戻ってこなくても探さないで」と他メンバー陣はのたまっておられた。ちなみにこのトイレ、使用した紙は持ち帰るようにビニール袋まで用意されていたが、私は持ち帰るのは嫌なので、翌朝、朝露で適度に濡れた葉っぱを5枚ばかりちぎっていった。 #
by shirabiso
| 2003-07-27 21:16
| 山登り・温泉
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